前立腺癌について ~50才になったらPSA検査!~
前立腺がんとは
前立腺がんは、前立腺肥大症とともに中高年男性が特に注意すべき病気の一つです。前立腺がんの発生には男性ホルモンが関与しており、加齢に伴うホルモンバランスの変化が影響していると考えられています。
この病気は他の臓器のがんとは異なり、ゆっくりと進行するため、早期に発見できれば治療がしやすい特徴があります。初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることがあるのが問題です。
進行すると、最終的には骨や他の臓器にまで転移する可能性があるため、早期発見と適切な治療が重要となります。
症状について
早期の前立腺がんには、特有の症状がほとんどありません。しかし、進行すると以下のような症状が現れることがあります。
▶尿が出にくい
▶排尿時に痛みを感じる
▶尿や精液に血が混じる
さらに進行すると、がんが臀部(お尻)と腰の骨を中心とした体内の他の部位にまで転移する可能性があります。骨に転移した場合には、『骨痛(コツツウ)』があらわれることがあります。
診断の流れ
前立腺がんの診断には、まず「スクリーニング検査」を行います。この結果によって癌が疑われた場合、次にがんの「確定診断」を行います。がんが確定された場合には続いて「病期診断」を行い、癌の進行度(広がり)を確認します。
診断の流れや検査の順序、方法は施設によって異なる場合がありますので、検査については主治医とよく相談して行うようにしましょう。
スクリーニング検査について
●PSA(前立腺特異抗原)検査
前立腺がんのスクリーニング検査で最も精度が高く、簡単に行うことができるのがPSA検査です。PSAは前立腺に特異的なタンパク質の一種で、がんが発生すると血液中の濃度が高くなります。血液中のPSA値が高ければがんの可能性が疑われ、高いほどがんの確率も上がります。
しかし、PSA値が高いからといって必ずしも前立腺がんであるとは限りません。前立腺肥大症や前立腺炎でもPSA値が高くなることがあります。そのため、PSA値が高い場合には、前立腺がんの可能性を詳しく調べるために、さらに直腸診、経直腸的超音波検査、前立腺生検などの追加検査を行うことがあります。PSA値が高い場合、フリーPSAを測定することで、前立腺がんのリスクをより正確に評価できます。一般的に、前立腺がん患者ではフリーPSAの割合が低い傾向があります。
PSA値が高い場合、フリーPSAを測定することで、前立腺がんのリスクをより正確に評価できます。一般的に、前立腺がん患者ではフリーPSAの割合が低い傾向があります。PSAが高い場合でも、フリーPSAの割合が高ければ、前立腺がん以外の良性前立腺肥大症(BPH)や前立腺炎などの可能性があります。フリーPSAと総PSAを組み合わせて測定することで、より正確な診断とリスク評価が可能となります。
●デジタルレクトル検査(DRE)
医師が指を使って直腸から前立腺を触診し、異常の有無を確認します。硬さやしこりなどを感じることで異常を検出します。PSA検査と併用することで診断精度が向上しますが、患者にとって不快感を伴う場合があります。
●経直腸超音波検査(TRUS)
経直腸的に超音波プローブを挿入し、前立腺の画像を取得します。前立腺の大きさや形状、異常の有無を確認します。前立腺の詳細な画像を取得できますが、不快感がある場合があります。
確定診断・病期診断について
●前立腺生検
針を使って前立腺の組織サンプルを採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確認します。通常、超音波ガイド下で行われます。がんの有無を確定診断するために最も信頼性が高くなりますが、侵襲的な手法であり、出血や感染のリスクがあります。
●前立腺MRI
MRI検査は非侵襲的で、前立腺の内部構造を詳細に確認できますが、高価であり、検査時間が長い場合があります。
年齢別PSA基準値
年齢により、PSAの基準値が少し変わってきます。
年齢 | 基準値 | PSA値 | ||
---|---|---|---|---|
1.0ng/mL以下 | 1.0ng/mL~ 基準値 | 基準値以上 | ||
65歳未満 | 3.0ng/mL 以下 | 3年に1度検査 | 1年に1度検査 | 専門医受診 |
65~69 | 3.5ng/mL 以下 | 3年に1度検査 | 1年に1度検査 | 専門医受診 |
70歳以上 | 4.0ng/mL 以下 | 3年に1度検査 | 1年に1度検査 | 専門医受診 |
前立腺癌検診ガイドライン2018より引用
治療法
前立腺がんの治療法には、手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法などがあります。
治療法は、がんの進行度や患者の健康状態によって異なります。