エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)

エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)とは】

長時間同じ姿勢でいることで足が圧迫され血流が悪くなり、血栓(血のかたまり)が足の静脈内にできやすくなります。
できた血栓が肺に詰まって肺塞栓を起こす疾患をエコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)と言います。

航空機のエコノミークラスで、長時間狭い椅子に座ったままの状況で起こることがあることから、エコノミークラス症候群と呼ばれています。

塞栓源の多くは足や骨盤内の静脈の血栓であるため,起立,歩行,排便などの際に足の筋肉が収縮し,筋肉ポンプ作用により静脈血液量が増加することで,血栓が剥がれて血流にのって肺まで飛んでしまうと考えられています。

原因

以下のような基礎疾患等があり、加えて長時間の同一姿勢・脱水があると発症しやすくなります。

静脈の血管が傷ついている 手術などによる血管損傷、カテーテル検査、静脈炎、糖尿病、喫煙など
静脈の血液の流れが悪い 長時間同じ姿勢でいる(寝たきり、長距離旅行)、肥満、妊娠、下肢麻痺、心疾患、下肢静脈瘤、うっ血性心不全,慢性肺疾患, 脳血管障害、高齢など
血液が固まりやすい 抗リン脂質抗体症候群、癌、経口避妊薬・ホルモン剤、脱水、先天性疾患など

症状

小さい血栓の場合は無症状のことも多いですが、ある程度の大きさの血栓の場合は息苦しさ・息を吸うときの胸痛・冷や汗・失神・動悸などの症状が現れることがあります。
また、肺血栓塞栓症の直接的原因である深部静脈血栓症の症状として、下肢の腫れ・下肢の痛みがあります。特に片脚にこの症状が出た場合は、深部静脈血栓症の可能性が高くなります。

検査

肺血栓塞栓症 胸部X線検査、心電図検査、心エコー検査、血液ガス分析検査、血液検査、造影CT検査、肺動脈造影検査など
深部静脈血栓症 血管エコー、血液検査、造影CT検査など

治療

治療には、薬(血液をさらさらにする・血栓を溶かす)、カテーテル治療、外科手術の3つがあります。
また、脚の静脈にできた血栓が肺へ流れないように下大静脈フィルターを用いることもあります。

災害時の問題点

エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)は近年、大きな災害時に特にクローズアップされています。
避難所生活という通常とは異なる生活環境により、以下のような様々な因子が相互的に作用し発生率が高くなると考えられています。

  • 活動量の低下による血流の停滞
  • トイレ使用を避けるための水分摂取不足
  • ストレスによる血圧上昇、不整脈増加(薬剤の欠乏)
  • 保存食による塩分摂取の増加・低温環境
  • 肺炎等の感染症の増加

予防

  • 避難所(車中泊)等では長時間にわたって同じ姿勢を取らず、脱水を起こさないよう適量の水分を取りましょう。
  • 軽い運動(かかとの上げ下ろし・足踏み)、ふくらはぎのマッサージ、寝る時に足を上げる等を行いましょう。
  • 利尿作用のあるお酒やコーヒーを控えましょう。
  • 原因に上がっている基礎疾患をお持ちの方は災害に備え、3日以上の水分、塩分低めの保存食、普段飲まれているお薬、弾性ストッキング等を準備しておきましょう。
nurse
原因・症状からエコノミークラス症候群を疑う場合は、
早めの受診をおすすめします。