癌(悪性新生物)について
日本人死亡原因の割合
2023年の日本人の死因構成割合は癌(悪性新生物)が最も多く、次いで心疾患、老衰、脳血管疾患となります。
令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況より引用
癌とは
癌(がん)は、細胞の異常な増殖によって引き起こされる病気です。
正常な細胞が何らかの原因(遺伝子の変化等)で制御不能に増殖し、腫瘍を形成することがあります。
この腫瘍が周囲の組織や臓器に侵入し、体全体に広がることもあります。
体のエネルギーを消耗したり、正常な組織と入れ替わり臓器などの機能不全を引き起こします。
癌は多様な種類があり、それぞれ異なる特徴と治療法があります。
また、かかりやすい癌とそれが原因で死に至る癌は必ずしも一致せず、男性と女性ではかかりやすい癌が異なります。
40代後半からかかりやすくなり、女性よりも男性の方がかかりやすい傾向があります。
(男性罹患率は約2.5%、女性罹患率約1.8%)
地域によって罹患率に差があるものの、明確な原因はわかっていません。
癌の男女別罹患順位
癌の罹患率に男女間で差がある理由はいくつかあります。主な要因は以下の通りです。
- ホルモンの影響
女性はエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンのため、これが癌のリスクを高めることがあります。特に乳がんや卵巣がんに関連しています。 - 生活習慣
男女間で異なる生活習慣や環境要因が影響します。
例えば、喫煙や飲酒の習慣が男性に多いため、肺がんや口腔がんの罹患率が高くなることがあります。 - 遺伝的要因
一部の癌は遺伝的要因によって影響を受けることがあり、男女で異なる遺伝的リスクがある場合があります。 - 検診の頻度
女性は一般的に健康診断や検診を受ける頻度が高いため、早期発見されやすいです。 これにより、罹患率が高く見えることがあります。
これらの要因が組み合わさって、男女間で癌の罹患率に差が生じることがあります。
がん罹患数の順位(2020年)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
男性 | 前立腺 | 大腸 | 肺 | 胃 | 肝臓 |
女性 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 |
がん死亡数の順位(2022年)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
男性 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓 | 乳房 | 胃 |
国立がん研究センター 最新がん統計のまとめより引用
危険因子
危険因子 | 癌 | |
---|---|---|
喫煙 | 肺・喉頭癌 食道癌 |
タバコの煙に多くの発癌物質が含まれています。 |
食事 | 胃癌 大腸癌 食道癌 |
塩分・肉類・アルコール等、特定の食品が過剰になると癌を引き起こします。 |
またバランスを欠いた食生活は癌のリスクを高めると考えられています。 | ||
遺伝的要因 | 乳癌 子宮癌 大腸癌 |
リスクの高い遺伝子を受け継ぐ事があり、遺伝的要因と家族に共通する環境が影響し合って、発癌を促すと考えられています。 |
環境的要因 | 肺癌 | 化学物質を扱う工場での労働者や、周辺地域の方、産業廃棄物による環境汚染等が、癌のリスクとなっています。発癌性のある化学物質として、有名なのがアスベスト(石綿)です。 |
特定の ウィルス感染 |
肝臓癌 胃癌 子宮頸癌 |
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは肝臓癌、ヘリコバクター・ピロリ菌は胃癌のリスクを高めます。 子宮頸癌の原因はヒトパピローマウイルスへの感染と言われています。 |
その他 (紫外線・放射線) |
皮膚癌 | 長年、日光を浴び続けることで高齢になり皮膚癌を発症することがあります。被爆により白血病や固形癌のリスクが高まります。 |
一般的な症状
体重減少、疲労感、異常な出血や痛みなどが挙げられます。癌の症状は、癌の種類や進行度によって異なります。
検査
血液検査、超音波検査、マンモグラフィ、CT、内視鏡検査(胃・大腸カメラ)、PET、病理組織診、細胞診等。
治療法
癌の治療には、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、ホルモン療法などがあります。
最近では、個別化医療や標的治療といった新しい治療法が注目されています。
患者さん一人一人に適した治療法を選択することが大切です。
予防と早期発見
生活習慣の改善や定期的な健康チェックを通じて、癌の予防や早期発見が可能です。
バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、適度なアルコール摂取などが推奨されます。
癌・体験記
72歳女性の場合(長女様より)
2016年、母から「首にしこりがある」と相談がありました。最初は「風邪か何かでリンパが腫れただけ」と軽く考え、病院で一度診てもらうことを勧めました。しかし翌週、実家を訪れた際に母の首のしこりを触ってみると、異様に硬く感じました。
近くの外科を受診し、検査の結果、悪性の腫瘍であることが判明。鹿児島市内の大きな病院への紹介を受け、徳洲会病院で一連の検査を行いました。最終的に小腸がんの遠隔転移との診断を受けました。
母は「一刻も早く手術をして抗がん剤治療を始めたい」と強い意志を示しました。その思いを尊重し、手術と抗がん剤治療が始まりましたが、私自身は常に不安と向き合い、母が亡くなることばかり考えていました。
振り返れば、もっと一緒にいろいろな場所へ行ったり、たくさん話をしたりすればよかったと悔やまれます。
自宅に戻る前に生活しやすい環境を整え、ケアマネージャーの支援で在宅看護・介護を受けることができました。
短い期間でしたが、自宅での時間を大切に過ごし、少しでも親孝行ができたと感じています。
53歳女性の場合
3年前、私は左甲状腺癌の手術を受けました。20代から甲状腺にのう胞や良性の腫瘍があることが分かっており、徳洲会病院で経過観察を続けていました。40歳頃から、のう胞の中にあった腫瘤が次第に大きくなり、形も歪になってきました。
穿刺検査を数回行った結果、最終的に癌と診断され、甲状腺摘出手術を受けることになりました。
甲状腺癌の5年生存率は96%で、私の場合は周囲のリンパ節に異常がなかったため、比較的安心して手術に臨むことができました。
手術後、長男が涙ながらに「大丈夫?」と声をかけてきました。麻酔の影響でうまく話せず、「大丈夫よ~」と返事をするのが精一杯でしたが、その時の長男の表情は今でも忘れられません。
私は、しつこいくらいに検診を受けていたおかげで早期発見・治療に繋がりました。担当医からも「他の臓器にも癌が見つかる可能性がありますので、定期的な検診を続けましょう」と言われました。
私の家系は癌リスクが高いため、これからも毎年検診を受け続けるつもりです。
定期的な健康チェックと専門医の診察を受けることをお勧めします。